前職の経験をどう活かすか|蕎麦屋開業で失敗しないために必要な「頭の切り替え」
手打ちそば教室、とくにプロコースには、会社員や公務員、製造業、IT関係、営業職、自営業など、さまざまな職歴を持つ方が参加されています。そして多くの方が、そば打ちの技術を身につけ、蕎麦屋の開業を目指します。
前職で培った経験は大きな財産ですが、その考え方をそのまま飲食業に当てはめてしまうと、思わぬ勘違いを招くことがあります。
前職の経験は蕎麦屋経営でも大きな武器になる
これまでのキャリアが、開業後に役立つ場面は数多くあります。
例えば、事務職や経理、IT関連の仕事を経験された方は、売上データや原価、客数などを細かく分析し、経営改善に役立てるケースが少なくありません。パソコンを使い慣れている方であれば、日々の売上統計や顧客データを整理し、数字に基づいた店舗運営を行えるという強みがあります。
このような経験は、蕎麦屋経営においても大きなアドバンテージとなるでしょう。
「お客様の視点」を忘れないことが重要
一方で、飲食業の経験がない方ほど意識していただきたいのが、「自分がお客様だったらどう感じるか」という視点です。
過去の業界の常識やビジネスモデルをそのまま持ち込むと、蕎麦屋の実情とは合わない判断をしてしまうことがあります。
手打ちそば店は、商品を販売するだけではなく、食事の時間や空間そのものを提供するサービス業です。だからこそ、お客様目線で考える姿勢が欠かせません。
営業時間にも蕎麦屋ならではの考え方がある
例えば、教室でも「午後3時から5時頃は来店が少ないため、中休みを設けて夕方から営業を再開する蕎麦屋が多い」というお話をしています。
ところが、小売業や販売業の経験が長い方の中には、「店舗は一日中開けているもの」という感覚が強く、営業時間を長くすれば売上が伸びると考えてしまうケースがあります。
しかし、実際には人件費や光熱費、仕込み時間との兼ね合いもあり、営業時間を適切に設定することが効率的な店舗運営につながります。
業種が違えば数字の見方も変わる
売上分析においても、業界による違いがあります。
例えば、団体のお客様が来店し、一人がまとめて会計をした場合でも、蕎麦屋では来店人数全員が「客数」です。
ところが、小売業の感覚で「支払いをした人=客数」と集計してしまうと、客単価や来店分析が実態とかけ離れた数字になってしまいます。
正しい経営判断を行うためには、飲食業ならではの指標や考え方を理解することが重要です。
売上規模よりも、一杯一杯の積み重ねが大切
企業勤務時代に大きな金額を扱っていた方ほど、開業後の売上規模とのギャップに戸惑うことがあります。
しかし、個人経営の手打ちそば店では、数百万円、数千万円単位の売上を短期間で求めるのではなく、一杯のそば、一人のお客様を大切に積み重ねていくことが何より重要です。
利益も同様で、「わずかな利益だから」と軽視するのではなく、一円の利益を積み重ねる意識が健全な経営につながります。
蕎麦屋開業では「経験を活かし、先入観を捨てる」
これまでの職歴や社会経験は決して無駄にはなりません。しかし、前職の成功体験に縛られすぎると、新しい業界で柔軟な判断ができなくなることもあります。
手打ちそばの技術に自信を持つことは大切ですが、開業後は「蕎麦屋一年生」として謙虚に学び続ける姿勢も欠かせません。
まとめ|技術だけでなく、商売人としての視点を持つ
手打ちそば店の開業では、そば打ちの技術に注目が集まりがちです。しかし、長く愛される蕎麦屋を経営するためには、技術だけでなく商売としての視点も必要になります。
前職の経験を上手に活かしながらも、飲食業ならではの考え方やお客様目線を身につけることで、より安定した店舗運営につながります。
そばを打つ技術と同じくらい、「経営者として学び続ける姿勢」が、成功への大切な要素と言えるでしょう。
(ブログに掲載された記事を再編集)